第八章 決心

第八章 ~決心~ バイバイ

キーロックが外され、車に乗り込んだ。お兄ちゃんは黙ったままエンジンをかけた。車は静かに動き始めた。由香はまた窓の外を見ていた。外の風景がだんだんぼやけてくるのが分かった。駄目、駄目だって…そう思ってるのに抑えきれなかった。涙が頬を伝っていく…

第八章 ~決心~ 二人の心の距離

メニューを差し出され、由香は和風ハンバーグのセットを注文した。彼も同じものを注文し、店員が下がろうとしたところに、由香はケーキのメニューも要求した。「おい、おまえ、ケーキなんて食べられないだろう?」店員が見えなくなったところで、お兄ちゃん…

第八章 ~決心~ 最後の晩餐

どのくらいの時間が経過しただろう…「ね、そろそろ帰らなきゃ」由香は、自分の腕枕になっていた彼の腕を戻し、ベッドから起きあがって、何事もなかったように服を着ながら言った。お兄ちゃんは、驚いたように由香を見上げた。「あ、う、うん。そうだね」そし…

第八章 ~決心~ もう何も分からない

彼の唇は由香の体中を這っていった。でも、その動きは突然止まった。「ごめん…」お兄ちゃんは、ベッドに仰向けになって一言謝った。「ごめん?ごめんってどういうこと?」「ごめん。俺にはおまえを抱けない」「なんで?ねぇ、なんでなの?」由香は懸命に聞い…

第八章 ~決心~ 抱いて

そのうち車は繁華街の灯りが見える場所を走り出し、それは帰りが近くなったというサインだった。もうお別れなんだな、と思うと由香は何も言えなくなっていた。「どうした?」その様子を見て、お兄ちゃんが聞いた。「もうちょっとだけ一緒にいられないかな。…

第八章 ~決心~ サイドシート

「じゃ、そろそろ帰ろうか」お兄ちゃんが言った。「え?もう帰るの?」「だって、明日もまた朝から学校とバイトがあるんだろう?本当は今日もバイトだったんじゃないのか?」「うん…学校の用事があるって言って休ませてもらった」「ごめんな、いつも突然で」…

第八章 ~決心~ 本当に言いたいこと

「作家って言えばね、お兄ちゃんが好きな作家の小説、バイト中にけっこう読んだよ。コンビニにも何冊か文庫本置いてあるじゃない?それを読んでこっそり返しておくの」由香は笑いながら言った。「そんなことしちゃいけないのに」お兄ちゃんは笑いながらも、…

第八章 ~決心~ 何があっても好き

「いつからコンビニでバイトしてるの?」気まずい空気の中、お兄ちゃんが口を開いた。「私の誕生日くらいから…かな。友達が誕生日プレゼント持ってきてくれた時、バイトの話を紹介してくれたから」「そっか…しばらく会わないあいだに、誕生日も終わっちゃっ…

第八章 ~決心~ コンビニで働く理由

「よくコンビニのバイトなんかやる気になったよな。コンパニオンはどうしたんだよ」「ほとんど入ってない。コンビニの方が忙しいから」「もったいない。コンパニオンの仕事だったら、男に媚びてヘラヘラしてるだけで、時給2500円だろ?そっちの方がずっと割…

第八章 ~決心~ 口に出せない台詞

「おまえが言ったのはここだよね?」2時間ほど走って、お兄ちゃんが車を止めた場所。それは飛行機が見える土手だった。今まで見た中で一番素敵だと思ったその場所。「よく分かったね」由香は表情を変えないままで答えた。「おまえのことならたいてい分かる」…

第八章 ~決心~ 賭

約束の日曜日がやってきた。朝カーテンを開けると、曇り空だった。雨でもなくそして晴れでもなく。それは、まるで由香の心そのものだった。約束の時間通りにお兄ちゃんはやってきた。「久しぶり」助手席に乗り込んだ由香に、お兄ちゃんはちょっとだけ微笑ん…

第八章 ~決心~ 久しぶり…だね

ここのところ毎日雨が続いていた。夏休みに入っているのに梅雨明けが随分遅れているように思う。でも雨は好きだ。何もかも流してくれる。傷も過去も痛みも全て。この雨が終わる頃には、この曖昧な感情も全て流れてくれるだろうか…「もしもし、俺。久しぶり……