第九章 平穏

第九章 ~平穏~ 涙雲はもういらない

ある日、店長は前にいた店の子たちと会うからと、由香をその集まりに誘った。男女あわせて10人くらいのバイトの子が来ていたが、みんな店長を慕っていた。「みんなに慕われてるんだね」途中、みんなで寄った喫茶店で、こっそり店長に言うと「いい金づるだと…

第九章 ~平穏~ 戻れない過去

「明日、朝から出かけない?バイト休みでしょ?俺、明けだから」店長から誘いを受けたのは、秋も深まりかけた頃のことだった。翌朝、店長は由香の家まで迎えに来てくれた。「お疲れ様です、店長。明けなのに大丈夫なの?」店長の車に乗り込んだ由香はそう声…

第九章 ~平穏~ 手放しの幸せ

そうこうしているうちに卒業に向けてのいろいろな行事が始まった。由香の通う短大は、卒論がない代わりに、卒業研究、研修旅行がありその準備に追われた。卒業研究は育てていたラットの解剖のレポートだった。数匹のラットに様々な餌を与えて、その栄養分の…

第九章 ~平穏~ 舞い戻ってきた現実

仕事が終わった後、由香が店長に連れられて行ったのは、新しい高速道路を造ろうとしている工事現場だった。「こんなところで何するの?」由香が聞くと、店長は車のトランクから店で売っていた子供用の花火セットを出してきた。「これやろうと思って」よく分…

第九章 ~平穏~ 強がり

「就職が決まったのに、元気ないね?」バイト中、掃除をしていた由香は、店長からそんな言葉をかけられた。「元気だよ」由香は強がって答えた。「そう?じゃいいけど」店長は、由香と正反対の位置にいる人だった。一緒に仕事をしたり、時々遊びに行ったりし…

第九章 ~平穏~ 就職活動

友人たちが内定とか最終面接とか言っているのに、由香はまだ履歴書用の写真さえ撮っていなかった。これからの自分を作ることが出来なかった。抜け殻とか放心状態とか、そんな言葉がちょうどだった。「…由香、ねぇ、由香ったら」「え?何?ごめん、何も聞いて…

第九章 ~平穏~ 後悔して欲しかった

一睡も出来ないまま朝が来た。いつものように学校に行き、その帰りにバイトに行き、いつもと同じ生活をした…と思う。正直なところ、全く記憶にない。記憶にあるのは、彼と別れた後、トイレで散々吐き、そのままベッドに転がり込んだこと。それでも全く寝られ…