第一章 嫌悪

第一章 ~嫌悪~ 切なさを知る

多分、今ここでこうやって話してる彼が、本来の彼なのだろう、由香は思った。 静か過ぎず、騒ぎ過ぎず、相槌を打ちながらお互いの様子を伺う二人。 しかし、その伺いは、いつものように裏の影を見るようではなく、ただ相手を知りたい心から来るものだった。 …

第一章 ~嫌悪~ 分かりあえるからこそ

由香の家は、お兄ちゃんが言うように周りは田んぼや畑だらけの田舎で、帰り道はかなり暗い。消えそうな電灯がまばらに見える程度で、人に出会うこともほとんどない。 そんな暗い道を二人で歩いていたら、遅咲きの桜だろうか、生暖かい風に吹かれて花びらがヒ…

第一章 ~嫌悪~ 本当の姿

二人は居酒屋の近くからバスに乗り、電車の駅までたどり着いた。 しかし、バスに乗った後も、駅で電車を待っている時も、彼はほとんど口を開かなかった。 「お兄ちゃん、どうしたの?気分でも悪いの?」 気味が悪くなって由香は聞いた。 「いや、そんなこと…

第一章 ~嫌悪~ お兄ちゃん

『本当に言っちゃったよ、この男』 あんなこと言わなければ良かったと思ったが、後の祭りだった。 鈴木さんがしくしく泣き出したのを見て、他の男の人は必死でフォローしていた。 「新井、そんな言い方ないだろう」 と新井さんを責める人もいたが、彼はます…

第一章 ~嫌悪~ ピエロの役回り

次のサークルは、居酒屋で懇親会だとのんちゃんから連絡があったのは、初めてのサークルから1週間ほどした頃だった。 乗り気ではなかったが、のんちゃんの立場も考えて、あと何回かは顔を出しておこう、と由香は決めていた。 「サークルは夕方からだし、それ…

第一章 ~嫌悪~ 真意が見えない

「靴を履き替えたら、向かいの喫茶店に移動して下さい」 メンバーの男性が叫んでいるのが聞こえたので、みんな言われた通り、ゾロゾロと喫茶店に向かった。 全員が着席したところで、アイスコーヒーとケーキを人数分、と先ほどの男性が注文した。しかし、甘…

第一章 ~嫌悪~ ムカつく男

約束の土曜日がやってきた。初めてのサークルはボウリングだった。 ゲームの前に通っている学校や学部などそれぞれ自己紹介をし、その後勝負が始まった。チーム対抗で、最下位チームが1位チームのゲーム代金と、あとで行く喫茶店代を払うということだった。…

第一章 ~嫌悪~ のんちゃんからの電話

「もしもし?由香?久しぶり。私、典子」 典子、通称のんちゃん。 彼女は由香の小学校の時の友達で、かなりの才女だ。全国的にも有名な某四大に、上位の成績で入学した。 中学に上がる時、由香は引越したのだが、未だつきあいは続いていて、それはもう10年…

第一章 ~嫌悪~ サークル

「由香、由香、ね、もう決めた?」 そう言って、後ろから抱きついて声を掛けてきたのは、智美だった。 智美は高校の時からの同級生で、同じクラスになったことはなかったが、何となく気が合い登下校を共にする友人だった。 智美の後ろには、同じく高校の時の…